子育てミーティング ご報告!
NPO法人ひいなアクション主催のイベント「アートと子育てミーティング」のトークイベントに出演してきました。
会場の金沢21世紀美術館のシアター21は、物々交換のできる「かえっこバザール」やDVDアニメーションの上映コーナー、着せ替えコーナー、絵本コーナー、ワークショップコーナーなど親御さんが安心して子供さんと遊びに来られる空間となっており、当日はとても賑わっていました。トークには20名ほどの方がご参加くださり、一度座るとなかなか立ち上がれないビーズクッション(人をダメにするクッション?という名前があるそう・・)にみなさんどっかり座っていただき、子育てやアートとの関わり方などいろいろな意見を交換することができました。
高橋律子さんは21世紀美術館の企画やNPOの活動でも女性ならではの視点で、アートの領域のなかで見過ごされることの多い女性的な仕事や女性ならではの内面的な表現や日常の関係性から生まれる作品やアーティストを取り上げながら、社会に対して問いを発信し続けておられます。
長島友里枝さんは今回初めてお会いしました。作品はこれまでに拝見したことがあり、どんな方なのだろうとドキドキしながら当日を迎えましたが、カッコよくで強くて繊細でおもしろくてとても素敵な方でした。
私自身は「母親」になってまだたったの2年。産後、発表活動を再開したこの一年を振り返り、アーティストとしての仕事・活動と子育ての両立の現状や難しさと現実的な解決案を、様々な育児スタイルを話し合うこの場の叩き台のようなものとしてお話できれば良いのではないかと思い出演しました。格好悪くても美化せずに、ありのままをお話することを今回のトークの主眼に置いていました。
「ご自身の子育て期間中どのようにお仕事と両立されていましたか」という長島さんへ質問に対して「何もしていなかった。できなかった。他に撮るものないし、息子を撮ってた」と潔い答えでした。(広告のお仕事や、近年発表されているお子さんを撮影した作品など将来の作品発表に向けての制作はされていたと思います。)小さい子供がいながら、撮影などに出かけることはなかなか難しいと想像できます。印象的だったのは、お子さんが4歳のころに長島さんが仕事で海外へ出かけられた時に息子さんから泣きながら国際電話がかかってきて、息子さんの気持ちが落ち着くまで数時間電話に付き合って話をきいたというエピソードでした。「ここ!という、子供は合図を発している時に、それを見逃さず時間を作ってあげること」とアドバイスがありました。国際電話で通話料が高くて気になったけど!結局2万円くらいの請求が!と会場の笑いを誘っておられました。
女性の参加者が多いなか、男性の方もご参加くださり「在宅で育児をしながら仕事をしているため、育児や在宅ワークとの両立の大変さが非常によく理解できる」「以前仕事で男女共同参画に携わっていて、男性の子育てに関わる権利があるということを広めたい」など貴重なお話を伺うことができました。
女性に子育てのより多くの負担がかかっていることについて、実際的には夫婦のなかでより収入の多い方の仕事が優先される傾向があります。(長島さんいわく、女性の方が収入が多くても家事の負担の度合いは変わらなかった。)確かに、夫婦あるいはパートナ間において収入の多い者が仕事により集中できるよう、もう一方がケアワーク(育児・家事などの無償労働)を行うことは家族が生き残るための現実的な戦略と言えるでしょう。ネット上の記事や議論を見ていて、育児や家事の問題が経済的な議論にすり替えられてしまうことが多い現状に悔しさを感じています。本当は、経済的なことと関係なく両親が育児に十分に関わることができるということは与えられるべき権利だと思うのです。経済的な事情と天秤にかけることなく、自分の子育てや家族のプライベートの時間を両親揃ってもう少し充実させることができたら素晴らしいと思いませんか。
女性がもっと育児と仕事を両立しやすい環境が整えば、女性は仕事に置いてもより能力を発揮することができます。男性は一家の経済的な支えを一手に抱え込まなくても良くなります。家族のために働き続けるというプレッシャーから解放され、それを夫婦で分かち合うことができます。
様々な生活スタイルや経済的状況があるなかで、十把一絡げに語ることはできませんが、身近なところから「もし、こうであればなあ」という願望が叶うとしたら、パートナー(私の場合は夫)の労働時間がもう少し短くなり、平日の夜に一時間でも子供に関わることが可能になればということでしょうか。それだけでも慌ただしい夕方の家事・育児、家族の時間に余裕が生まれるはずです。あとは産後の男性の有給の育児休暇の取得が広く利用されるようになることでしょうか。(数日や一週間では実際は意味がないのですが)長時間労働是正・・・これは難しい問題です。表面的に「改善」しても構造や体質、体制が変わらなければ意味がないのですよね・・・。
このような出産や育児を含めた人生の計画、男女の社会的な性(ジェンダー)やその役割について学び、考えることのできる場は、性教育だと考えています。性といっても現状日本で行われているような生物学的な生殖や性徴についてのみでなく、もっと広く自分たちの性やその多様さ、ジェンダーの平等や役割、人間関係構築やコミュニケーションや妊娠の仕組みや避妊、出産・育児など将来の選択について、子供のころから偏りなくもっとオープンに学び考える場があれば良いのになあと思っています。
シンプルに「なぜ?」と疑問に思うことから考えることを始めたいと思います。
[参考文献]
世界に学ぼう!子育て支援―デンマーク・スウェーデン・フランス・ニュージーランド・カナダ・アメリカ/ 汐見稔之著 大枝佳子ほか / フレーベル館
デンマークの子育て・人育ち-「人が資源」の福祉社会/ 澤戸夏代ブラント著 / 大月書店
こんなに違う!世界の性教育 / 橋本紀子著 / メディアファクトリー