アトリエ引っ越し計画 その2
私の住んでいる町は伝統環境保存区域・眺望景観保全区域に指定されている地域で、歴史的な建築物も残る昔ながらの住宅地です。2015年に北陸新幹線が開業したことで、金沢市中心部だけでなく、近隣でも宿泊施設やお店のオープンを目にします。町家や古い建物を利用したお店が多く、通りがかりに改装工事の経過を眺めたり、雰囲気の良いお店を偶然見つけるのはとても楽しいです。
そういったことで町家や空き家の需要も高まっており、空き家を探し始めてから数か月、いくつかの物件を見せていただいたものの、なかなか比較する基準が掴めず、迷っている間に他の方が成約されるということが何度もありました。こうして決断を見送るなかで少しずつ、何を優先すべきか整理されたように思います。
私の場合は予算の中で、物件の購入とアトリエとして使用するための最低限の改修できるかどうかが一番大きな目安でした。同じ価格帯の物件でも、更地にして利用するわけではないので建物の現状がより良いほうが当然改修費用は抑えられますから、ほとんど土地代のような物件でも、価格と建物の状態や間取りなどとのバランスを重視しました。
とはいえ、町家の場合はそもそも古い建物ですから工事で基礎をめくってみてはじめて、柱の腐食や白アリの被害など不具合が分かることもあります。購入はある種、賭けのようでもありました。(予算が許すのであれば、購入前に専門の方に依頼して建物状況を診断してもらうのが良いのでしょうね。)あとは立地や前面道路が車両通行可能か(作品の運搬、搬入出のため)、日当たりなど・・細かい項目とのバランスでしょうか。
なかなか条件に合う物件が出てこないなか、お世話になった不動産事務所さんから「ご近所などで気になる空家があれば、登記簿をお調べして持ち主の方にご連絡することもできますよ!」というアドバイスをいただき、何年か前に売りに出ていた記憶のあった町家を調べていただくことにしました。その後、不動産事務所さんと所有者さんを交えて内見をさせていただきました。いざ決断となるとやはり悩むもので、少し時間をいただき交渉の末、購入させていただくことにしました。
契約が無事に済み、所有者さんから「楽しみにしています。」と言っていただき、お世話になった不動産事務所さん、所有者さん、町家との出会いに感謝しつつ、温かな気持ちになった契約日でした。
写真のような窓の格子が可愛らしい町家です。アトリエでの仕事とは関係がないのですが、庭があるのも魅力的で、あの木を植えようかとか、将来は和風のお庭にしたいわ、畑にして何か育てようかしら、など今から夢は膨らみます。予算の都合もあり、ピカピカの全面改装!とはいきませんが、工事後も自分で少しずつ手を入れて居心地の良い空間にしたいなと思っています。(はやく障子を張り替えたい!)
~続く~ 次は工事のお話